■■■タクシー・ドライバー('76米)

監督:マーティン・スコセッシ
主演:ロバート・デニーロジョディ・フォスターシビル・シェパード
カンヌ映画祭でグランプリを獲った、マーティン・スコセッシ監督の出世作。病んだ現代のNYを淡々と描写。ヴェトナム帰りで不眠症に悩まされる主人公に、スコセッシの分身とも言える(「ミーンストリート」「キング・オブ・コメディ」とスコセッシ作品は多い)デ・ニーロが扮する。当時もっとも話題となったのは、「12歳半の娼婦、ジョディ・フォスター*1」だけど、彼女もスコセッシの初期作「アリスの恋」に出演済み。
脚本は、後に監督となる(「アメリカン・ジゴロ」「キャットピープル」)ポール・シュレイダー。音楽は、ヒッチコック作品で知られる、バーナード・ハーマンでこれが遺作となった。
冒頭の煙の中から、タクシーがニュット出てくるシーンの不安にさせる旋律は、ハーマンならではのもので思わずニヤリとさせられる。繰り返されるアルトサックスのメローなリフも、印象的。この冒頭のシーンでは、雨にぬれたフロントガラスににじむネオンサインが、またいいムードをかもし出す。
他には、ハーヴェイ・カイテル(ポン引き)、ピーター・ボイル(先輩のドライバー)、
レオナード・ハリス(大統領候補)、アルバート・ブルックス、ダイアン・エイボット(当時のデニーロ夫人で、レゲエsswのグレゴリー・エイボットの従姉妹という、演じるのはポルノ映画館の売店の売り子)ら。スコセッシ監督自ら、浮気している妻がいるアパートを見張らせるタクシーの乗客に扮する。
ヴェトナム後遺症が、大統領候補狙撃未遂まで起こしてしまう、というのもよく言われることで、実際にジョディ・フォスターを救うために、政治家を狙った男*2も現れた。
また何もない日常に戻り、眠れない日々が続いてゆくラスト(シェパードとの再会のシーンは、なかなかいい)も余韻がある。
ジャクソン・ブラウンの“レイト・フォー・ザ・スカイ”が流れるシーンは、初めて見たときはビックリだった。それまで、デ・ニーロというと演技派のイメージだったが、このトラヴィス役(最後はモヒカン頭に)には鬼気迫るものがある。このデニーロの演技が同時代の日本の俳優に与えた影響も大きい(特に松田優作)。

Taxi Driver、Columbia、1h53、■■■

*1:既に子役としていくつか作品をこなしていたが、この娼婦役で強烈な印象を残す

*2:81年に実際起こった事件でレーガン大統領(当時)が狙われた