■■■□エクソシスト('74米)

エクソシスト ディレクターズカット版 [DVD]

エクソシスト ディレクターズカット版 [DVD]

監督:ウィリアム・フリードキン
主演:リンダ・ブレアエレン・バースティンマックス・フォン・シドー
ウィリアム.P.ブラッティの同名ベストセラー(新潮文庫創元推理文庫)の映画化。日本公開は、74年で、それまであくまで見世物小屋的なものだった、ホラー映画(当時はオカルト映画と呼ばれた)を、エンターテイメント的な芸術的作品に高めた金字塔とも言える1本。
単純に少女に悪魔が憑依して、と言う話ではなく、キリスト教的宗教観をしっかり描いたドラマとなっている。日本公開当時も、失神騒動が連日伝えられたが、あながち配給会社の宣伝*1だけ、というわけでもなさそう。ディック・スミスによる特殊メイクは、当時としては群を抜く画期的なものだった。
悪魔にとりつかれた少女が、卑猥な言葉で罵り、十字架を股間に押し付け、緑色の吐瀉物を吐き付ける様が、いかにも衝撃だった(その時の声は、マーセデス・マッケンブリッジ)。イラクの遺跡発掘場所で、この悪魔にかつて遭遇した経験のある老神父と、母の孤独な死に自責の念を強く持っている若神父(その部分をを悪魔は攻め、死んだ母親のイメージショットが挿入される)vs悪魔の、祈祷のシーン(凍えるような寒い部屋!)はクライマックス。あと繰り返される病院での検査のシーンも、妙にリアルで痛い。
現代音楽家の作品に混じって、当時全く無名だったマイク・オールドフィールド*2の、“チューブラー・ベルズ”が使われ、この才能あふれるマルチプレイヤーの名前を大きく売りだした(シングルカットされ、全米#7まで上昇)が、映画使用ヴァージョンは、ヴァージンから出たソロとは、別物で、演奏には加わっていない。
Tubular Bellsdetail]
他には、ジェイソン・ミラーキティ・ウィンリー・J・コッブ、ジャック・マクゴーランら。リンダ・ブレアは、これでブレイクするが、「エアポート’75」「ローラーブギー」など、あくまでB級映画に出る元ティーン女優の域を出なかった。
ジョン・ブーアマンが監督した続編「エクソシスト2」('75)は、イナゴの大群が現れる珍品で、むしろ作者ブラッティが監督した(「?」を見て怒ったらしい)「エクソシスト3」('90)の方が、続編に近い。L.J.コッブ演じた刑事を、G.C.スコットが演じ、カラス神父(ミラー)の、死の謎に挑むものだが、凡作。
00年にディレクターズカットが登場したが、いくつかの追加シーンは蛇足と言われつつ、コッブが神父を映画に誘うラストの余韻が心地よい。安易なサブリミナル効果という説もあるが。
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The Exorcist、Warner Bros、2h01

*1:当時はこういうハッタリ的な宣伝が多かった

*2:オールドフィールド本人は「エクソシスト」に使われたことを嫌っていたが