夜の大捜査線('68)

夜の大捜査線 [DVD]
監督:ノーマン・ジュイソン
主演:シドニー・ポワティエ、ロッド・スタイガーウォーレン・オーツ

公民権運動の盛り上がりと 黒人の権利向上を背景にこの映画は作られたといってもいい。黒人刑事が主役の作品は、世界初。原作は、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)新人賞を受賞した、ジョン・ボールの警察小説「夜の熱気の中で」(邦訳はハヤカワミステリ文庫)。
ミシシッピの田舎町にて、旅行中に訪れた黒人刑事と白人署長の確執から、友情らしきものまでを描きつつ、警察小説の映像化としても十分面白い。人種差別が色濃い南部の地でのとまどいと憤りが、冷静なポワティエを通して浮かび上がってくる。南部風俗ともいえる、黒人による綿花取り(スピルバーグの「カラー・パープル」の世界)やら蒸し暑い深夜のイライラ感(蠅が多い)が、伝わってくる。
音楽はクインシージョーンズで、ゴスペル風のタイトル曲をレイ・チャールズが歌う(33位まで上昇)。オスカー5部門独占(助演男優、作品、脚本、音響、編集)だが、その中に、後に監督となり「帰郷」を撮った、ハル・アシュビー(編集)の名もある。他にはスコット・ウィルソン(犯人と間違えられスタイガーに追われる)、ラリー・ゲイツ、クエンティン・ディーン(肉感的なこの女優のヌードは、プロダクションコードに引っかかり、乳首を窓枠で隠すという手法がとられた。また冷えたコーラの瓶で胸を冷やすシーンも、半分以下の編集を余儀なくされた)、アンソニー・ジェイムズ(こちらは犯人、いかにも異常者的な風貌で強烈な印象を残す。壁に止まった蠅を輪ゴムで打ち落とすシーンに南部の空気が止まったような暑さをイメージさせる)、ジェームズ・パターソンら。リー・グラントは、夫を亡くす役柄で短いながらの熱演だが、私生活でも夫(劇作家、アーノルド・マノフ)を亡くしたばかりだったという。マノフに関する証言を拒否したため、「赤狩り」で非米委員会のリストに入り、当時仕事を干されていた(娘、ダイア・マノフも女優に)。
そのキャラクター、ヴァージル・ティッブスが独り立ちし、続編が2本(「続・夜の大捜査線」「霧のストレンジャー」)作られたが、どっちも大した出来ではない。

In The Heat Of The Night、United Artists 1h48 ■■■