明日に向かって撃て!('69)

監督:ジョージ・ロイ・ヒル
主演:ポール・ニューマンロバート・レッドフォードキャサリン・ロス

20世紀初頭、西部に実在したブッチ・キャシディーとサンダンス・キッドの壁の穴強盗団*1を描いた作品。西部劇ではあるものの、従来のスタイルとはかなり違い、アウトローを主人公にした人間ドラマとなっている。脚本はウィリアム・ゴールドマンで、悲劇的なラストもそれほど悲壮感なく(画面は銃を撃ちながら物陰から出た二人をストップ・モーションで捕らえ、徐々にセピアカラーとなってゆく)描かれている。バート・バカラックの音楽は−特にB.J.トーマスの"Raindrops Keep Falling On My Head"が自転車のシーンで使われ、キャサリン・ロス扮するエッタをブッチとサンダンスが精神的に共有するかのような微妙な関係をイメージさせる−スキャットも含め、セピアトーンと共にノスタルジックな効果をあげている。
正体がわからない追っ手のシーンは、スピルバーグの「激突!」に影響を与えたかも。崖から飛び込むシーン(泳げないんだ、というサンダンスの台詞)は、若きダイアン・レインが主演したロイ・ヒル監督の「リトル・ロマンス」('78)にも引用。但し仏語で。
他にはストローザー・マーティン、ティモシー・スコット、チャールズ・ディアコップら。クロリス・リーチマンが娼婦役で出ててビックリ。この老け役が多いけど若いんだ。

ニューマン、レッドフォードとロイ・ヒルのトリオはこの後「スティング」でもう一度仕事をするが、本作に負けない面白さで、映画スターと職人監督の絶妙なコラボレーションが楽しめる。こういう、誰と誰が共演を誰が撮ってという想像を楽しむ層の厚さが70'sアメリカ映画にはあった気もする。前日談ともいえる「新・明日に向かって撃て!」は79年にリチャード・レスターが撮った。こちらはウィリアム・カットとトム・べレンジャーが若き日のブッチとサンダンスを演じている。
「映画をめぐる冒険」から引用。

私事で恐縮だが僕は飼っていた二匹の雄猫にブッチとサンダンスと言う名前をつけていたことがある。しかし誰も正確な名前を覚えてくれなくて「ブッチャー」とか「サンダース」とか呼ばれて、まるでプロレスラーみたいな感じになってしまった     (村上春樹

Butch Cassidy & Sundance Kid、20th Century Fox、1h52、■■■

*1:サム・ペキンパーが監督した「ワイルドバンチ」はブッチとサンダンス脱退後の壁の穴強盗団を描いたもの