卒業('67米)

監督:マイク・ニコルズ
主演:アン・バンクロフトダスティン・ホフマンキャサリン・ロス
原作はチャールズ・ウェッブの同名小説(邦訳はハヤカワ文庫NVの初期のラインナップ)。ニュー・シネマの代表作みたいに言われるけど、ニコルズをはじめとするスタッフ、出演者は舞台出身者が多く、意外と手堅く作ってある。僕がこの映画を好きでないのは、もうサイモン&ガーファンクル・アレルギーだからで(何故かS&Gというかポール・サイモン、ダメなんだ)、音楽の使い方はそれこそ「イージー・ライダー」並みに斬新で、映像とほぼ対等な位置にある。落ち込むホフマンの心象風景を映し出すような"Scarborough Fair"の使い方など、それまでなかった。舞台でサリヴァン先生を演じたバンクロフトがアル中の欲求不満な熟女を演じて、そのギャップに驚く。また60's末になってプロダクション・コードと言われる映画製作倫理規定の性表現に関する部分がだいぶ緩められ、ここでもバンクロフトがホフマンを連れ込んで最初の誘惑を試みる際に、乳房の露出のカットをサブリミナル効果のように挿入している。カルダー・ウィリンガムと共同で脚本を書いたバック・ヘンリーは、ホテルのクローク役で出演、笑いを取るのに成功している。なのにこの評価は、やはり「S&Gの音楽が流れる映画」として刷り込まれてるせいもある。ラストの花嫁奪回のパターンは数多いフォロワーを生んだけど((例えば大塚博堂の"ダスティン・ホスマンになれなかったよ"('76)))、バスに乗ってからの両者の視線はうつろで、この後のことを考えるとハッピーエンドとはとても思えない。
The Graduate、Embassy、1h47