抱きしめたい('78)

監督：ロバート・ゼメキス
主演：ナンシー・アレン、ボビー・ディ・シコ
｢バック・トゥ・ザ・フューチャー｣（'85）でブレイクした、ゼメキスだけど、僕が注目したのは、スピルバーグが監督した壮大なコメディ（そして大コケした）「1941」('79)。ボブ・ゲイルとの共同脚本によるその作品でも、ハチャメチャな展開でいて、ツボをちゃんと押さえたコメディ作家として十分冴えていた。
ゼメキスは、62年のビートルズアメリカ上陸を題材に取ったこの作品で、監督デビュー。当然ながら、ビートルズ役の役者は顔を見せず（足と声だけ）、当時はわりと使用許可がゆるかった事もあって、映像と楽曲でカヴァー。熱狂的なビートルズのファンには、「1941」に起用される、
アレン（最初はそれほどのファンではなかったが、偶然彼らの部屋に侵入できて失神する）、ウェンディー・ジョー・スパーバー、マーク・マクルーア。そしてセレサ・サルダーラ、ディ・シコ、スージー・ケンドール・ニューマン（アンチビートルズ派で、PP&Mやバエズを聞け！と主張）といった無名の若い役者を使って見事に成功している。スージーは、ポール・ニューマンの長女で、先妻の娘（ジョアン・ウッドワードは義理の母になる）。ほとんどこれ1本の人。
60'sの有名なDJ、マレー・ザ・K が、本人役で出演。エド・サリヴァン役の俳優も似ている。風俗映画として見てもおもしろい。今でこそビートルズは、最初から人気があった、なんて記憶のすり替えが起こっているが、アンチビートルズ（最初Beetleｓとなっていた、看板のスペルを直すところから始まる）のディ・シコが、フォー・シーズンズはどうなったんだ！と叫ぶ(彼はイタロ=アメリカン)。ピチカート・ファイヴが、♪We　Love You P-5〜 とカヴァーした曲が、実はビートルズファンの女の子たちが、ホテルの前で合唱する歌（♪We Want Rollers、Come On みたいに）だったりする。
今では大家となってしまったゼメキスが、失ってしまったものがここにはある。乞DVD化！

I Wanna Hold Your Hand、Warner Brothers、1h34、■■■